産後、実母との関係が悪くなった ―母になって変わる、母との距離―
妊娠や出産をきっかけに、実母との関係が変わることがあります。
出産前までは、それなりにうまくやっていたはずなのに。
里帰りをしたけれど、思っていたよりもしんどかった。本当はもう少しいる予定だったけれど、予定を早めて自宅に帰った。
手伝ってもらえるのはありがたい。ご飯を作ってもらったり、赤ちゃんを見てもらったり、助かっていることもたくさんある。
それなのに、一緒にいるとなぜかイライラする。
「どうして急に、母のことがこんなに嫌になったんだろう」
そんな自分自身の変化に、戸惑う方もいます。
「娘だった私」が、「母親」になる
出産すると、実母との関係に、それまでにはなかった視点が加わります。
それまでは、母と娘だった。
けれど、赤ちゃんが生まれて、自分も「母親」になります。
すると少しずつ、
「私はこの子を、こうやって育てたい」
という思いが出てきます。
泣いていたら抱っこしてあげたい。怖がっていたら安心させてあげたい。できるだけこの子の気持ちを考えながら関わりたい。
もちろん、育児に一つだけの正解があるわけではありません。
それでも、自分なりに大切にしたいことが少しずつできてきます。
そんなときに、実母から、
「そんなに神経質にならなくても大丈夫よ」
「そんなに抱っこしていたら、抱き癖がつくんじゃない?」
「あなたのときは、そんなことしなかったけどね」
と言われる。
ただの「育児方針の違い」で済むこともあります。
でも、ときにはその言葉が、思っていた以上に心に引っかかることがあります。
里帰りしたのに、「家に帰りたい」
産後に実母との関係が大きく揺れる場面の一つが、里帰りです。
「実家に帰る」というと、慣れ親しんだ場所に戻るように聞こえます。
でも実際には、すでに大人になり、自分の生活を持っている娘が、もう一度実家の家族の中に入っていくことでもあります。
しかも、産後の心も身体も不安定な時期に。
赤ちゃんへの接し方。授乳への口出し。赤ちゃんが泣いたときの対応。実父の何気ない言動。「私の頃はもっと大変だった」という比較。
一つひとつは些細なことでも、毎日積み重なっていくと、とても苦しくなることがあります。
助けてもらうために帰ってきたはずなのに、
「ここにいる方がしんどい」
と思う。
そして、予定していた里帰りの期間を短くして、自宅へ戻る人もいます。
それは、「せっかく助けてくれる親を拒絶した」という単純な話ではないのかもしれません。
自分が母親になり、自分の家庭を持ったことで、実家とのちょうどいい距離が変わっていることもあるからです。
「これは、私が決めたい」
自分が母親になると、実母との間に、これまでとは違う境界が必要になることがあります。
どこまで母に頼るのか。
どこからは自分で決めたいのか。
自分たち夫婦の育児に、どこまで入ってきてもらうのか。
これまでは「娘」として母の言うことを聞いていたことにも、
「これは、私が決めたい」
と思うようになる。
それは、母を嫌いになったということではなく、母と娘の関係が変わっていく過程なのかもしれません。
一方で、実母の側にとっても、「自分の娘」が母親になり、自分とは違うやり方を選ぶことへの戸惑いがあるかもしれません。
だからこそ、簡単にはいかないこともあります。
少し距離を取った方がうまくいく親子もいます。
頼る内容を限定した方が楽になることもあります。
「ここからは私たちで決めるね」と伝える必要が出てくることもあります。
自分が母親になったことで、実母との関係もまた、新しい形に作り直していく必要があるのかもしれません。
母との距離が変わることは、悪いことではない
出産前と同じように母と付き合えなくなった自分に、
「冷たくなったのではないか」
「親不孝なのではないか」
と罪悪感を抱くこともあるかもしれません。
けれど、自分の家庭ができ、自分も親になったのなら、親との距離が以前と変わるのは不思議なことではありません。
母に感謝していることと、母から少し離れたいと思うことも、両立します。
無理に以前と同じ関係に戻そうとしなくてもいいのだと思います。
そして、実母との関係について考えていると、ときにもう少し違う気持ちに気づくことがあります。
「私は、この子にはこんな思いをさせたくない」
そう思ったとき、
「では、自分自身は子どもの頃、どんな思いをしていたのだろう」
と、自分が「娘」だった頃のことが見えてくることがあります。
それについては、また別の記事でゆっくり考えてみたいと思います。
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アンダンテ相談室の産後カウンセリングでは、赤ちゃんについての悩みだけでなく、出産をきっかけに変化した実母との関係についてのお話も伺っています。
「こんなことで相談していいのかな」と思うことも、そのままお持ちいただいて大丈夫です。
すぐに母との関係を変えたり、答えを出したりするのではなく、まずは今、自分の中で何が起きているのか。
そこから、ゆっくり一緒に考えていきます。


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